続・流動体について / 贅沢とユーモア

宮崎です。
8/25発売の雑誌 GQ JAPAN にインタビューを掲載いただきました。

コロナと店の向き合い方について、僭越ながら自分の意見を述べさせてもらいました。

インタビュー中に頭の中で考えてたことは、Mukta、Salにいつも足を運んでくれているお客様のこと、
店のスタッフのこと、デザイナーのこと。
皆様に生かされていることを実感して何となくエモい気分になっておりました。

緊急事態宣言中の4月。
僕は、HONEYEE.COM BLOG にて
当時の何とも言えない、
SFみたいな空気感と共に、思うがままに文章を書きました。

その時の気持ちは1ミリも変わっていません。転載の許可をいただきましたので、是非一読していただければ嬉しいです。

時代は既に変わりました。
これからの僕達4人の活動をご期待くださいませ。

宮崎

以下 2020.4.5 honeyee.comに綴った記事を転載 
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「流動体について / 贅沢とユーモア」

お久しぶりです。
前回の更新から2ヶ月弱。
まさか世界がこんな状況になるとは思ってもいなかった。
きっと誰も思っていなかっただろう。

僕が尊敬してやまない小沢健二氏のTwitterより。
"Woke「起きている」とは、社会・政治性を意識していること。
今どきはUS若者にとってファッションの第一条件にさえなっていて、
最近はwokeness(派生語:社会意識の初心者的暴走をからかう感じの語)
もよく聞く。(後略)"

服屋を9年弱営んでる肌感からすると、
日本の若者にとってファッションの第一条件ではないし、
そもそも自分自身はWokeなのかWokenessなのか。
小沢氏の言葉はいつだって、僕に己を省みる素敵な機会を与えてくれる。
ただ、少なくとも世界が皆同じ問題に悩み、苦しむ状況に、自分の意思を表明出来ないことは寂しい。
承認欲求を満たすためだけの、悪い意味でのファション的な#ポストや振る舞いには怒りすら覚える。
何て浅はかなんだ、と。
いつだって事を荒げるのは余裕のある"ヤツら"だと思う。火中の人間にはそんな余裕なんてあるはずがない。

さらに引用。僕を鬱状態から救い出してくれた、画面の向こうの英雄の一人、志磨遼平氏の連載より。
"(前略) 文化は、我々がさずかった尊い宝石である。
近頃、やたら友人との連絡が増えた。みな仕事が減り、外出も自粛しているからだ。
その際に、今聴いている音楽を添えて送ってくれる友人もいる。やさしい音楽ばかりが届く。
かなしいかな、音楽は今、平時より輝いてみえる。
音楽だけに限らず、映像や書籍も同様である。誰とも接触することなく、安らぎが得られるのが文化の利便性だ。
私は自らの仕事を誇らしく思う。(後略)"

僕は兼ねてから、好きなことで飯を食う。という希望を抱く、若者たちとの価値観のズレを感じてきた。
彼らの多くは、いつか無数の選択肢から、自分が他より秀でた能力を発揮できる何かに出会えるという夢を抱いている。
問題はそこに苦痛が伴わないと思っていることだ。
正にgiftが届く、自分好みの宝物が見つかるという幻想。きっと何者にもなれない恐怖を背後に薄っすらと感じながらも。

僕の周りにいる大切な仲間はみんな好きなことで飯を食っている。
日々現実と向き合い、もがきながらも前を見て戦っている人たち。
自分にはコレしかなかった人たち。
コレでしか他者と繋がれなかった人たち。
志磨氏も同様の事を書かれていたが、昔、芸人は米も釘も作れない河原乞食と呼ばれていた。
汗水流して田畑を耕すでもなし、道具を作ることも出来ない。
芸能は人々の余裕があって初めて成立する仕事だ。
僕らの表現しているファッションは衣食住における衣の価値観を超えた贅沢品である。
だからこそ、僕らは自分の立場を理解し、人生を賭けてそこに向き合う覚悟がいるのだ。
好きなことで飯を食う、ではなく、
運よく飯を食わせていただいているので、精一杯努力して良いものを届けます、と。
そしてその覚悟をもって行動した結果、芸人は人々の心を突き動かす素晴らしい音楽や映像や、文学を生み出す。
もちろんファッションも。そして、こんな毎日でも誰かの心にそっとやさしい音楽が輝くのだと思う。

僕たちの店、Mukta / Sal は( 4月5日時点 )通常営業をしている。
3月から4月に予定していたイベントは、少しの変更点はあったが中止はしていない。
もちろん無理な集客をかける気はないし、個人の意思で自粛することは良いことだと思う。
ただ、僕らは服でしかポジティブなメッセージを発信することが出来ないから、
僕らの提案するファッションを快く思っている人たちへ、漏らすことなくポジティブな情報を伝えたいと思っている。
店に来なくてもいい。でもわざわざリスクを冒して来てくれたお客様には絶対笑顔になって帰ってもらいたい。
僕らだからこそ出来ることがある。

僕らはファッションに救われた。だから今度は僕らが恩返しする番だ。
皆さま、どうかどうか、お身体にはお気をつけて。

mm

 

"だけど意思は言葉を変え言葉は都市を変えてゆく" "サイテーな未来へ 進むなら、よろこんで! これがユーモア 地獄でも 笑えるんだぜ"