Diary 125 - 道具
Diary 125 - 道具

どうぐ - 【道具】物を作り出すため、あるいは仕事を捗らせるため、また生活の便のために用いる器具の総称。他の目的のための手段・方法として利用される物や人。
僕は学生時代、土木系の勉強をしていて、道具について考える機会が人より多くありました。道具と工具の違いについて、教授が話していたのをよく覚えています。手で直接扱うものが道具、機械制御で扱うものが工具だそうです。つまり手で握れるものが道具だということです。
はたまた哲学の授業でも、道具の話を聞いた記憶があります。人間以外の全ては、自己実現という目的を果たすための手段=道具であると、ハイデガーという哲学者が言っていたそうです。道具を使って、なりたい姿になるということです。あまりに普通すぎて、記憶に残っています。
手で扱うという点となりたい姿になるための手段という点。そんな2つの意味を持つ、道具という言葉をとても面白くて、かっこいい言葉だなと思います。そんな道具の美しさを存分に表したバッグがあります。

”GRIP”と名付けられた、Dries Van Notenのバッグ。”握る”という意味の通り、手に持つことにフォーカスしたようなソリッドなデザイン。馬具をイメージさせるようなハンドル、取り外し可能な保険代わりのショルダーストラップ。レザーは肉厚でありながら、柔らかくしなやかなカーフ。マチの十分あるつくりは日常使いには十分、旅行にも困らない容量。ライナーはスベスベのスエードレザー。開閉部はマグネット留めの仕様になっており、丸みのあるミニマルな形状がより美しく、こだわられていて憎い。
握るだけで背筋が伸びるような美しさは手に持つ人をカッコいい男にしてくれるようなパワーを感じます。
キコのチュニックに、ガブリエラのショーツの合わせ。足元にサロモンのメリージェーンを履くと、ワンピースを着ているように見えて可愛い。バッグがより女性らしい雰囲気を帯び始める。フェミニンなアイテムを合わせるのも面白いな。
ドリスのめっちゃ短いデニムショーツに、ぺたんこのレザーシューズ。ショーツにレザーバッグを合わせると、避暑地への旅行みたいなリゾートな雰囲気が漂う。手汗と共に握ってください。

手で持つバッグという道具性、カッコいい男になれるような成長をもたらしてくれる道具性。
2つの道具性を兼ね備えたこのバッグは、握る人を大きく変える道具となるかもしれない。
ヨシダユウキ