Diary 169 - Doresuなデニム

Diary 169 - Doresuなデニム

ドレスウェアに片足半くらい突っ込んでいたヨシダです。以前在籍していた職場の先輩から聞いて覚えている、考え方があります。それは、極端にフォーマルなものや極端にドレッシーなものこそ、カジュアルなものに合わせると面白い、というものです。例えば「タキシードにデニムを合わせる」とか、「短パンにホールカットの革靴を合わせる」とか。適度に品良いスタイルが50%として、全てフォーマル度50%のもので揃えるのと、フォーマル度100%とフォーマル度0%合わせるのとは、結果的に同じフォーマル度に感じる、みたいな。

フォーマルとかドレッシーみたいな要素があるアイテムと、カジュアルなアイテムとの合わせの落差を楽しむ。僕がドレスとはなんたるかを語るのはおこがましいですが、それがドレスウェアの面白さなんだと思っています。

ドレスウェア的なテクニックを巧みに操っているDoresu Van Noten...いやDries Van Noten。そのデニムウェアは、僕が思うドレスウェアの面白さみたいなものを体現している。デニムは本来カジュアルの王道だけれど、一貫の寿司のようにミニマルかつドレープの美しいドリスのデニムウェアには、ドレス的な要素をふんだんに感じる。だからこそ、真っすぐドレスなもの、はたまた真っ直ぐカジュアルなものを合わせても、そこには落差が生まれる。それが、ドレスな要素も、カジュアルな要素も踏まえた、Dries Van Notenのモードさ。

Dries Van Noten氏は、アントワープで3世代に渡って続くテーラー家系の出身。だからこそ、氏のコレクションには、フォーマルとカジュアルのギャップを自在に操る達人、すなわちドレスマンの意志と、伝統と革新を重んじたモードの意志を感じる。デザイナー本人が退任された後も、その意志はブランドのレガシーとして受け継がれている。Dries Van Notenのジップアップタイプのデニムシャツ。デザインのキモであるジップを比翼で隠すというのがニクイ。スリムなシルエットかつウェスタンやワークディテールは排されたミニマルなスクエア・カット。控えめなポケット、マットなシルバーのririジップに対して、首元、袖に付けられたボタンが華やかさを添える。ブレザーを羽織っても、ドリスさんのスウェットを重ねても損なわれない、研ぎ澄まされたドレスシャツのような雰囲気。テーラードはもちろんのこと、デニムだろうがスウェットだろうが、何を作ろうとも、Dries is Doresu。Dries Van Notenの滑らかで柔らかいデニムのタック入りトラウザーズ。ワイドなシルエットから生まれるドレープが美しい。スラックス型にも関わらず、ボタンフライ、かつなぜかコインポケット付きで、お尻はジーンズらしいパッチポケットとレザーのロゴパッチ。フォーマルにも、カジュアルにも、いかように。Dries Van Notenの肩の凝らないデニムジャケット。ややルーズなシルエットは、柔らかな素材感を引き立たせ、凛とした落ち感を生み出している。やや大きめの襟、袖は少し長め。ブランドネーム入りのボタン、ゴールドのステッチ。某バイス的でありながら、ミニマル。腰に巻いても、タックインさえしても違和感のない、シャツのような軽やかさ。

ここ数シーズン継続でリリースされているDries Van Notenのペインターパンツ、前回即完したデニムタイプの色違い。のぺっとしたヨーロッパっぽいライトインディゴ、ドリスの定番のミディアムオンス。腰回りのすっきりした綺麗なストレートシルエット。ボタンフライ、斜めポケットに、コインポケットとレザーパッチ。今回入荷した4型の中で最もカジュアル、なんだけどやっぱり品がある。なんというか、ロンドンの図書館にいる、育ちのいい男の子が履いてそうな感じ。行ったことないけど。


重んじていることは多々あれど、ドレスがどうとか、カジュアルがどうとか、モードがどうとか、結局は関係ない。単にDoresuなデニムを楽しんでほしいと思う。

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ヨシダユウキ

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