ニューシーズン / ドリスヴァンノッテン
新しいシーズンが始まる。今年も始まる。
数シーズン前とは全然異なる、今の混沌した世界情勢で、たくさんの矛盾に気づくことがある。
考えているやつが偉い。それは間違いない。
どれだけ考えて考えて、発熱しちゃうんじゃないかってくらい考えて、頭の中のモーターが擦り切れるくらいまでフル回転させても出てこない答えと向き合い続ける苦しみ。
それを寸時解放してくれるのはいつだって言葉で説明しきれない、ヒトが共通して頭のずっと上の方に思い描く桃源郷に足を踏み入れること。
欠伸が出ちゃうくらい退屈で間抜けな簡単な答えには、ビンビンに張りつめに張りつめた弦をハサミで断ち切ることで辿り着ける。
そうか、そんなに簡単なことだったのだ。その気持ちよさったらありゃしない。
束の間、洋服と真摯に向き合うということを忘れる時がある。
忘れていたことに気づいた時、ちょっとだけ罪悪感に駆られる。
普段、これだけ洋服のことについてあれやこれやと想像を巡らせているのにも関わらず。
僕たち洋服屋の仕事はただ洋服に真摯に向き合うことなのだった。そしてその頭の中で写生したものをお客様にも伝えていく。常連の方々にはなんなら一緒に付き合ってもらう。
真摯に向き合うということは、そんなに難しいことでは無くて、ただじっと穴が開くほどその服を眺めて、ただじっと着方を考える。それだけでもいいのだと思う。
洋服の背景や歴史、生地がどうとか、そういうウンチクは真摯にむきあった結果として身につくだけで、さして重要なことではない。
僕たち洋服屋とお客さんは全く対等だ。
僕はお客さんに対して教える、なんていうスタンスは恐れ多くて取れない。ただ、色々な面白いことを、洋服を通して共有して、示すことはできるし、したいと思う。
だからこそ、勧めたいと思ったものは勧めるし、違うと思ったことは伝えるし、媚びることがなければ、驕ることもない。
だからお店での振る舞い方まで口を出そうと思うし、別に愛想笑いでごまかす事もない。
セレクトショップはスタイルを提案する場所だ。
スタイルというのは洋服の着方だけで成立するものではない。
思想もスタイル。というと、あまりに硬すぎるな。
もちろん、自分が100%正しいとは思わないし、思って欲しくない。でも120%自信を持って、信念を持ってそのブツを勧めようとは思う。
こいつ何言ってん、と思われるかもしれないが、多少期間が空いたあとの一発目のブログは荒れがちなのはもう理解してほしい。
素晴らしい洋服について書くときは前置きが暴走してしまって、最後までたどり着けないものなので。
今日このブログを読んで覚えて帰ってほしいのは、洋服と真摯に向き合ってみてほしいということ、新しいシーズンが始まるということ、そして今シーズンからドリスヴァンノッテンというブランドがお店に並ぶということ。
最近、すぐに質問してくる人が多い。
すぐに、というのは、自分で考えてみることなしに、ということで、それはまるでナゾナゾの答えをすぐに知りたがる輩と遜色ないのではないだろうか。
興味はスタートライン。でもスタートラインに立って満足するのも味気ない。
「面白い」や「カッコいい」に基づいて生きるためには、スタートラインからどれだけ走っていけるかに依る部分はあるだろう。
ドリスヴァンノッテンというブランドを、僕たちが取り扱う理由は?
どうしてこのブランドがこれだけ有名なのか?
一度向き合って考えてみるのはどうだろう?
まず、お店に見に来てみてください。それで、感じてください。
王道ともいうべきモノには遠回りをして初めて辿り着ける。
一物しか知らぬものに何を王道とするかは決められない。
果たして万人の王道たるモノかは分からない。
ただ、王道たりうるモノとして、私たちは喜んでそれを提案したい。
神戸の地で10年を迎えた私たちの持つ空間に、氏のモノを並べられることを光栄に思う。
今週土曜日からお披露目いたします。
どうぞ、よろしくお願いいたします。
新しいシーズンが始まる。
オシャレしようぜ。
痛めのタイコウ
令和っぽいって大分とキラーワード。