ハタくん
ハタくん、という友人がいる。友人と呼べるほどの年月や回数は重ねていないけれど、ハタ、という苗字が畑だったか秦だったか、パッとは分からないけれど、まあ友人でいいと思う。初めて会った時、彼はなんというかすごく落ち着いている、と昔から形容されてきたタイプなんじゃないかなという印象だったことを覚えている。物静かで、会話している時も、独特の間合いとリズム感が流れている。不思議な魅力がある。 いわゆる服オタでもあると思う。
自分が生きてきた中で、数回のターニング・ポイントを覚えている。誰しもあると思う。そんなに大したターニング・ポイントでなく、些細なやつ。直近のそれは3年前くらいだと思う。そこから新たな属性の人たちと少しずつ知り合って、それまでとは異なるコミュニティのマップができた。ハタくんは、その新しい自分の他人との関係性マップにおいて、象徴的な存在であるように思うし、当時のMukta / Salというお店づくりを行うにあたって、ハタくんみたいな人が似合いそうな空気感の洋服をもっと仕入れたいなあと思っていた。去年の秋リリースして、Muktaの定番パンツになりつつある、MATSUFUJI "OCTO"はそういう洋服だった。GRINDの誌面の撮影で、このパンツはこの人たちに履いてほしいなあと思ってお願いしたモデルたちの1人は、ハタくんだった。
彼は洋服のデザイナーをしている。初めて洋服を見たのは、Ans Dotsloevnerというブランドとの合同展だった。レザーのノースリーブのプルオーバー?エプロン?があって、タイトフィットで自分が試着するには窮屈で。色気があって、中性的で、ゴシックでさえあった。Lieve Van GorpとかDirk Bikkembergsとか、荒削りだけれどそういう色気と無骨さがあった。それはハタくんの第一印象とはおよそ異なっていた。
これがハタくんのパーソナリティなんだね、意外。
あまりよく覚えていないけれど、確かそういうことを本人にも言ったと思う。
「僕はこういう男になりたいんです。」ハタチそこそこのハタくんはそんなことを言ってたと思う。
それから、見にいける時には必ずハタくんの展示会には行ってお買い物をするようにしていた。シーズンごとに「今回はこんなふうにしてみました。」って嬉しそうに教えてくれるハタくん自身のパーソナリティの変化と、洋服づくりがリンクしていて、こちらも見ていて楽しかった。パーソナリティと洋服作りをリンクさせ続けることは仕事という意味でもクリエイションという意味でも難しいと思っているから。無垢なモノ作りをしている人は見ていて楽しいし、買いたくなる。
カバンの芯材?だったかなあ、を使った、狂ったシルエットのシャツは今でも欲しいなあ。多分二日酔いの寝起きだったからハタくんの丁寧無垢な商品説明は全然覚えてないけれど、抜群にカッコよかったことだけは覚えている。
そしてついこの間、出張中にハタくんのブランドの新しいシーズンの展示会の案内が届いた。生憎、展示会は翌週で、今回は行けなさそうかなと思っていたら、「明日場所抑えたので見にきてください!」との連絡が。まさかと思っていたけど、自分のためだけに場所を抑えてコレクションを見せてくれることになった。ああ、本当に静かな熱情を持っている人なんだなあと改めて感じた。
今週末、BIBLIOTHERKというブランドの展示受注会をMukta / Salにて行います。
デザイナーは畑 龍之介。たしか24,5歳だったと思います。彼が発表した新しいコレクションの中から、僕だったらこういうふうにお店に並べたい、買いたい、というアイテムをピックアップしました。一部のアイテムはデッドストック生地を使用しているため、リミテッド(オーダー上限)がついてますので、期間中にオーダーできない品番が出てきたらすみません。期間中は基本的にハタくんも在店してくれるそうです。
洋服が好きな全ての人に、見てほしいなと思うブランドです。
今週末、よろしくお願いします🙏
BIBLIOTHERK PRE-ORDER EXHIBITION at Mukta / Sal
5/10(FRI) - 5/13(MON)
12:00 - 19:00
アポイントメントフリー
個人的なイチオシは、カシミア混のデッドストック生地を使用した「丸い」トラックスーツと、おじさんが履いてそうな生地なのにスリムストレートかつ、表がブラック、裏はグレーという謎のリバーシブル仕様のスラックスです。ブログトップの写真をよく見てください。