Diary 144 - 未完成 / Hotel California
Diary 144 - 未完成 / Hotel California
未完成

色気はドレスマンに必要がない。とまでは言われたことがないのだけど、以前ドレスウェアのお店で働いていたことは、何度話しても尽きないくらいの話題がある。ドレスマンたるもの居酒屋に来てもネクタイを緩めてはいけないと言われた記憶がある(はずしてカバンに収めることは許されている)。イギリス的なマナーだ。そんな完全な格好良さも好きだが、ネクタイを緩めてボタンを一つ開けているような不完全な格好よさには、色気が漂う。sulvamのショーツは、切りっぱなしや、ダメージのような不完全さ感じられる。股上の深い、少し長めのイージースラックス。生地はドライなざらっとした尾州産のウール地で、クラシックな雰囲気漂うストライプ。遊び心あふれるランダムなパターンが、確かなパターンワーク、カッティングによって、存分に洋服に反映されている。注文服のような、一点もの的なユニークなデザインが、長年培われた知識、技術によって、既製服としてお店に並んでいる。


スラックスショーツとしても、はたまたイージーショーツとしても、その見え方は着る人それぞれによって、いかようにも変わる。手にした瞬間から既製服は注文服へと変化していく。
自分だけの注文服みたいに、あなたにフィットしてくれるに違いない。
Hotel California
暑いって言っても、暑く無くなるわけじゃない。これからの夏の暑い時期は汗との戦いが繰り広げられるだろう。その中で、僕らはどういうファッション的な戦術を取れるかが重要になってくる。毎年試行錯誤して、何か新しいものにチャレンジをしてきた。



子供の頃から父の影響で、アメリカ西海岸のロックバンドが好きな僕は、ビーチでコーデュロイのショーツを履いたサーファーの写真を見た。コーデュロイ自体を知らなかったが、何故なんだろう、暑そうと思った記憶がある。その答えを、洋服屋になってから知ることになる。コーデュロイという素材はパイル地の一種で、タオルみたいな素材なのだ。それゆえに肌触りが柔らかく、吸水性、速乾性に優れているので、ビーチのサーファーに愛されているらしい。
これだと思った。夏の日本にコーデュロイ、サーフィンをしたことがない僕にとっては新しい、しかも快適だと来た。



Omar Afridiのコーデュロイフレアショーツは細畝のライトコーデュロイを使用しており、土臭さの漂うブラウン。膝関節を少し曲げたように湾曲したシルエットで、膝裏が跳ね上がるようにフレアしている。肌に接する部分が少ないこともあり、パンツの中を、風が通るのを感じる。アメリカ西海岸では見かけないような都会的な雰囲気、構造的な美しさは、コーデュロイパンツになれた方にも、夏にコーデュロイを履いたことがないという方にも、大いに新鮮さがある。

昔から愛されているものを、僕たちの感覚で新鮮に履く。コーデュロイパンツを履いて、夏を快適にフレッシュに楽しんで欲しい。
どちらも立体的なショーツ。どちらも見たことのない形をしてるショーツ。けれど、誰にとっても親近感のある部分がある。人それぞれの新鮮さを味わえるショーツたち。
ヨシダユウキ