Diary 145 - ファッションは軌道を描くのか。

Diary 145 - ファッションは軌道を描くのか。

ファッションは軌道を描くのか。

僕が大学時代専攻していたのは、橋梁工学。相手にしていたのは、ファッションでもアートでもカルチャーでもなく、インフラストラクチャーだった。アートに興味はあったが、学問としてアカデミックな場所で学んだことはないし、正直に言えば学ぼうと思ったことはなかった。アートをファッション的に解釈していた僕は、今気分のものが見たいと思っていた。キュレーションという言葉にも無頓着だったし、よく意味が分からなかった。

大学時代のアルバイト先で出会ったのは、文学部でアートの勉強をしているという、何とも文学部らしい情報量の少ない見た目をした人だった。彼はキュレーションする人だった。社会の流れと時代時代のアートを線にしていくことだ。社会で起こっていることは、アートに反映される。年表みたいに、アートには必ず引用先みたいなものがあって、それぞれの点が結ばれていく。社会とアートの接点であったり、接続の議論が日々行われている。これがアートを大学で学ぶことのできる理由の一つだろう。

ファッションはどうだろう。ファッションは社会の流れを反映するのだろうか、明確に時代との接続性を議論出来るだろうか、はたまたブランドやアイテムの歴史を線に出来るだろうか?ファッションに携わっている僕たちは洋服の歴史を高尚なものにしたいのか。ある意味YESだし、ある意味NOだ。より多くの人にファッションを楽しんで欲しいし、知って欲しいとは思うのだけれど、学問としてではなく、もっと個人的なものでいいんじゃないかと思う。

今の時代のカルチャー、すなわち旧サブカルチャーであったであろうものの中に、既製服としてのファッションカルチャーは包含されている。本という媒体を介して、それらのカルチャーという点を線にしているブックストア兼出版社がある。

IDEA BOOKS (アイディア・ブックス)は、ファッションエディター、フォトグラファーのAngela Hill (アンジェラ・ヒル)と映像、音楽アーティストのDavid Owen (デイビッド・オーウェン) が設立したロンドンのアポイント制ヴィンテージブックストア。そんなイカした本屋さんが作るカットソーとコットンキャップ。僕はロンドンのお店には行ったことがないのだけれど、気に入ったお店にあるお土産的なものって妙に惹かれる。そんな気分で手に取ってもらえたらと思う。彼らがしていることは、ヴィンテージブックの販売に留まらず、ファッションにも活躍の場を広げつつある。ファッションをアート同様に、キュレーションする人というのは、こういう人達かもしれない。カルチャーというどんな場所にも存在するものを、線にしようなんて無謀だと感じるかもしれないが、実際に彼らは動き出しているし、線になる兆しを見せている。https://mukta.jp/collections/idea

 

ファッションは軌道を描くのか。

彼らの活動に協力することで、ファッションは軌道を描き、より多くの人へと届くきっかけとなるかもしれない。カルチャーブックを通して、そんな本屋さんのお土産を通して。

 

ヨシダユウキ

Recent Post