Diary 162 - 境目
Diary 162 - 境目歳を重ねてくると、結婚式だったり、ドレスコードのあるレストランだったり、スーツを着たり、正装をする機会が増えてくると思う。というか、実際にそう感じる。
ドレスを着るには冬は寒すぎるのか、レディーファースト精神で結婚式が成り立っているからなのか、結婚式はなぜか6月から9月に行われることが多い。
夏のスーツは大変だ。僕はもう慣れてしまったので、分厚くて、ざらっとしたイギリスっぽいスーツを汗だくで着る。けれど、イタリアっぽい薄くて、ツルッとしたスーツは夏らしくて、どこか大人で、いいなと憧れる。
ロロピアーナやゼニアに代表される艶やかで、軽やかな生地や、ふわっとしたリネン混のリゾートな生地はイタリアの十八番だろう。そんな生地で仕立てたドレスウェアは快適でありながら、涼しげな雰囲気を醸し出す。
CLASSのサルエルパンツは、でっかい三角形が二つ組み合わさったような形をしている。その作りのおかげか、通常のサルエルパンツとは比にならないくらいの生地の分量になっている。結果的にそのたっぷりの生地の分量が平面的なイメージのある、いわゆるサルエルパンツと違って、立体的なシルエットを生み出している。立体的シルエットも相まって、袴のようにも見える。ウエストはシャーリングの美しいイージー仕様。
生地は、イタリア繊維産業の中心地、トスカーナ州プラトを拠点とするLyria社の2種類のグレー地からピック。イタリアらしい柔らかで、軽やかなウール・ラミー / 控えめな艶がとてもドレスライクな、ざらっとしたシャークスキン。
クラシカルでドレッシーな生地を、よもや、変形のパンツに仕立てようなんて考えは僕の中には全くなかった。



クラシックなドレス生地の膨大なリファレンスや積み上げた経験に固執することなく、ピュアに洋服を突き詰めている、デザイナー堀切道之氏の洋服に対する直感が感じられる。
堀切氏の感性に、境目みたいなものは存在しないんだろう。今まで積み上げられた技術や経験則を捨て去り、踏み出す力強さを感じる。CLASS / Sarrouel Pants(Ramie Wool Stripe, Shark Skin from Lyria)