Chaos / Balance 〜20SS Buying Review "UNDERCOVER"〜
ずっとカオスなものが好きだった。
しかも、多分そう思い込んでいた。
でもそれは子供の時に、友達が積み上げた積み木を足で蹴って崩すみたいな、ある意味無責任なものだった。
(FFディシディアではカオス陣営ばかり使っていた。)
2、3年前まではそれで良かったのだが、なんとなくその無責任さに気づき始めて、初めは小さな違和感だったものが、今ではそれを乗り越えてゆかねばならない、大きなハードルとなって今眼前にある。
意図的で、洗練され、多くの思考を経て生まれるカオス。
矛盾しているようだが、それが第一ステップ。
ただ、カオスなだけでは見向きもしない人もいる。
第二ステップ。カオスを超えたその先にあるもの。
それは、"Chaos"でも"Order" でもなく、 調和が取れ、天秤がちょうど釣り合う"Balance"。その感覚は、ファッションの世界に限らず、善悪の判断、美的感覚、人間関係、など、個人差はあれど、一つの指標になるだろう。
去年のブログでも述べた、「中庸」とも近いかもしれない。
高橋盾氏は言わずと知れた、日本を代表するデザイナーだ。
来シーズンでブランド設立30周年を迎える今でさえ、進化し続けている。
モード、ストリート、カジュアル、アート、音楽、ハイプ、、全てを巻き込み、ぶち壊しながらも儚く、ユーモラスに洋服を作り続けるその姿勢で、第一線で世界中に影響を及ぼし続けている。
現代の若手デザイナーが尊敬するデザイナーを聞かれた時、今や川久保玲氏や山本耀司氏より、この人や、宮下貴裕氏を先に挙げることも多々あることだ。
正直、僕はこの方の作る洋服にあまり袖を通したことが無かった。
たまに過去のアイテムを古着屋で見ることはあっても、恐らく一着も買ったことが無かった。自分とは無縁だと思っていた。
でも何故か毎シーズンチェックしていた。店舗に実物を見に行くこともほとんど無かったが、何故か昔から知っていた。自分とは遠いはずなのに。
その時に気づいた。このブランドを知らない人はそういないのではないか?少なくともロゴは見たことはあるのではないか?
そう思い始めてからは恋愛のように頭を離れなくなった。気づけばヤフオクで検索し、summer of loveで話を聞いた。
そして気づいた。これが"Chaos"、"Balance"か、と。
知れば知るほど凄まじい経歴。コレクションの変遷。それでも第一線でやり続ける意味は?
それが知りたくなった。
パリでショーを見る直前までは半信半疑だった。
ショーを見た後もまだ。展示会で洋服を見て初めて理解した。
ファッションに携わっていながら、ほとんど目を向けていなかったことが恥ずかしくなったと同時に、これから間近で見ることができる喜びに浸った。
ジャガードやコラージュで限りなく再現されたシンディ・シャーマンの作品が、黒、チャコール、ネイビーを基調にしたコレクションを彩る。
荘厳でストイックに仕立てられたテーラードジャケットは、スリットが入れられたり、吸血鬼が潜んでいたりと軽快に、ユーモラスにまとめられる。
満を持して-その言葉が9年目のMuktaにはぴったりだ。
満を持して、このブランドを迎えられる。
浮ついた世の中にカウンターパンチを。
UNDERCOVER SS20 Collection
1/25(SAT) 13:00- Start.
at Mukta
P.S.
素晴らしい批評を書かれている平川氏のリンクを載せておきます。
→article(114)
イタイタイコウ