"Ghost"

#1

ミニマル、ということについて考えていた

考える軸は、無機物と有機物

ミニマルなデザインというとき、

それは無機物を想像していた

ミニマル・デザインという本の中に、

倉俣史郎の椅子があった

去年、京都で倉俣史郎の作品展に行った

そこに無機物はなかった

無機物を使っているだけで、

作り手の魂が宿っていたそれらは、
有機物と呼んで差し支えのないものたちだった

死んでいるけど、生きていた

死んでいる有機物がたくさんある

死んでいる有機物と生きている無機物
生きている有機物と死んでいる無機物

僕にはゴーストがぼんやり見えた 死んでいるゴーストと生きているゴースト

生きているゴーストは乗り移る
死んでいるゴーストは乗り移らない
(だから両方怖くない)

頭で理解しようとひんしに向き合うと、ゴーストが宿ることがある

神は細部に宿るとはよくいうが、

その神は自身の魂だと思った 

静かに燃える魂だと

倉俣史郎が無機物を使った理由が分かった

魂を澱みなくクリアに映し出すからだ 

あれは魂の形だ

彼はよくジャズを聴いていたそうだ

僕はいま、フィッシュマンズを聴いている

#2

最近、Persona 2.0をレンズも付けずにかけています

眼鏡をかける習慣のなかった自分にとって、

以前までは仮面のようなものでした 

毎日眼鏡をかけるようになって、その仮面のような役割が段々必要なくなってきました

いつも裸でいたいなと思いました

真正直に、人として、男として

だけど公共の場で裸になるのはみっともないので

きちんとしたマナーで服を着ます 

ビールでお腹が出てるので野菜ばかり食べるようにしたら

少しマシになりました 

あるんだけど、ない ないんだけど、ある

そういう空気みたいなものがいいんだけど、

空気の存在はよく忘れてしまいます

心が急いているとき、深呼吸をして空気を肺に宿すと、

その存在を思い出します 

誰かの魂が宿っているものに触れると、

その存在を思い出します 

乗り移っていきます

おばあちゃんが去年の秋に亡くなったことは年始にはつい忘れていました

そういえば喪中でした

明けましておめでとうございます、なんて言いながら

お葬式に着ていったエンソウの黒いベロアジャケットを着るとはっきりと思い出します 

おばあちゃんが乗り移ったんだろうと思います

いつ死ぬかわからないので

出来るだけ夢とロマンを追いかけたいと思います 

でも社会との関わりも欲しいのです

生きているゴーストになりたいのです

#3
倉俣史郎の代表作、"How High The Moon"(=月までなんて遠いんだろう)は大型の伝統的なアーム・チェアを建築資材のエキスパンド・メタルを用いることで、視覚的に質量を無くし、今にも月まで飛んで行ってしまいそうな儚さが漂っている。

倉俣史郎はミニマル・デザインの旗手というイメージで、エットレ・ソットサス率いるメンフィスとの交流がなぜ行われたのかいまいちピンときていなかった。けれども、彼の書籍やインタビューを読み込むうちに冷徹なミニマリストというよりも、ロマンチシズムに満ち溢れたデザイナーだったことが分かり、なんとなくいろんなことが腑に落ちた。

今回、新しい眼鏡を企画するにあたって、眼鏡そのものを無くしたらどうなるだろうか、というようなことを考えた。あるはずのものがない、ないはずのものがある、そういう魂の存在に近いような眼鏡ってどんな眼鏡なんだろうって。

ブルーがかったクリアとブラックの二層に分かれたセルロイド生地を使って、一点一点ランダムにハンド・カット。そこからさらに微調整を行い、フレームの一部が欠けて消失しているような、今まさに消えたり現れたりしているような、そういう印象のフレームになりました。

前回までのモデルはサングラスとしても、眼鏡としてもどちらでも、という感じでしたが、今回はできるだけ眼鏡としてかけていただくのがお勧めです。まあでも、お好みで。

大きく6種類の存在度のイメージから選んでいただけます。生地もだいぶ贅沢な使い方しますので、一点一点完全に同じものは存在しないことはご留意ください。おそらく大丈夫かと思いますが、生産の都合上、上限を設ける可能性もあります。とりあえず一週間ほど受注期間を設けてみますので、ご都合合えばぜひ。遠方の方は一度メールかスタッフまでお問合せください。

以前のモデルも相変わらずお気に入りですが、また長く愛せそうなフレームができました。毎度ながらストライクさんには生産とデザインの面でここまで抽象的なニュアンスを実体にしていただき感謝です。

"Ghost"
Pre-order: 8.2(Sat) - 8.11(Mon)
*Reception Party on 8.3(Sun) with Sunday Wine Club 17:00-22:00(LO)

Visuals: Ryota Ishii

8/3(日)は夕方よりレセプションも行います。僕がいつも通わせていただいているセンスのいいワインバーの店主、カミムラさんにワインをサーブしていただくので、お気軽にお越しください。

納期は約45日。皆さまの一本をお選びします。

こういう小ぶりな眼鏡はやはりセルロイド。色気のある生地に抜け感のある小ぶりなフレーム。セクシーな、例えば、エディ・スリマンみたいなムードにこの眼鏡だったり、アンディ・ウォーホルやジョン・レノンみたいな色気をかえって感じるナードさ。

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