Diary 164 - 結ぶ
Diary 164 - 結ぶ

ドレスウェアを取り扱うお店で働いていたころ、今よりもスーツを着る機会が多かった僕は、ネクタイを結ぶという行為は面倒なことだなと感じていた。絞められている感覚が、自分を抑圧しているように感じたからだ。
スーツを着ていないのに、ネクタイを結んでみようと思い立った日があった。その日の僕の格好を見た先輩は、ネクタイはリボンで結んでみたらと提案した。そんなことしていいの?と思っていた僕に、先輩は緩め方や結び方にファションがあるといった。その時は理解できていなかったが、タイを解き、リボンを結んだ僕は、何故か腑に落ちたような気持ちになった。
巻き方一つに、着る人の何かが反映されるんだと思う。大判のスカーフを首に巻いているかのように見える、Dries Van Notenのシャツ。タイカラーと呼ばれる襟型のシャツに近い見た目だが、作りはまったく異なる。前見頃の肩部分がそのまま伸びているような作りになっている。そのため首元が緩く開くことで、色気が漂う。ボディーはドレスシャツらしい細身のシルエットで、肩周りやアームはコンパクトに作られており、細めのスリーブがよりシャープな印象を加えている。
片リボンで結ぶことで、華やかに。
スカーフらしく、さらっと首に巻き付けて、気持ちはウエスタン。
Dries Van Noten / Curlbitt 2295 M.W.Shirt - White , Light Blue
ネクタイの原型はスカーフのようなものだと言われている。クロアチア兵が防寒の為に巻いていたものがイングランド兵の目に留まり、貴族の中で重宝されるようになったらしい。当時のスカーフの巻き方は100種類以上あったなんて話もある。
巻き方一つに自分の気分が反映され、相手に敬意を示したり、気持ちを表したりしていたんだろう。めちゃくちゃファッションじゃないかと思う。着る人によって、色んな姿を見せてくれるシャツであるし、巻き方には、あなたの心の機微が映し出されるんだ。
気の向くまま、感じるまま、結んでみてください。
ヨシダユウキ