"Mishima" 〜anti-timeless/hyper-remix〜


既成の価値観を疑う。

なぜなら、もはや既成の価値観というものは存在しないはずだから。

自分自身が最大の価値判断の基準であり、その自分自身は他者によって構築される。
他者というのは、周りの人という意味だけでなく、洋服、音楽、食事、風景、...自分が生活する環境に存在するすべての自分以外のもの。

現代に必要なものとは何か、ということをよく考える。
今生きているこの時代にふさわしいものは何か。

「一生物」なんてものは存在しない。
「一生物」かどうかは、客観的に決まるものではない。

僕はただ今の時代に即したものに興味がある。
今の時代に即したものは、未来を志向しているものでもある。

僕は洋服屋である以上、TPOの存在を無視できない。
お店に来た人たちを、その人たちがどのような時に/どのような場所で/どのような場面である服を着るか、を想定しながら色々な提案をする。

ただ、その時/その場所/その場面にただ合わせるのではなく、少しフレッシュにしたい。新しい風を取り入れたい。

その時/その場所/その場面にただ合わせただけの提案は、Muktaじゃなくてもきっとできる。
それはその人たちの生活を豊かにすることはできるだろうけれど、豊かにするだけでは僕は満足できない。

僕は僕にしかできないこと、しかできない。
しかも、それすら、ろくにできない。

僕たちが唯一できることというのは、その時/その場所/その場面をちょっとズラした演出をすることだけだ。

TPOを意識した上で、ちょっとズラす。
ある川の流れを、また別の流れに乗り換えさせるように働きかける。

均一化が嘆かれて久しい現代には、多くの小さなレジスタンスが存在する。
Muktaはその一つにしかすぎない。それがゆえに、小さな反抗を続ける。

それしか、できない。それすら、ろくにできない。

2020年ごろから、そういう思いを持って色々な別注に取り組んできました。

今回は、その一つの集大成的な立ち位置になるかと思います。

今回は2週に分けて、"anti-timeless/hyper-remix"というコンセプトで、「革靴」、「眼鏡」という二つのカテゴリに絞って、僕たちが今良いと思う、2022年に存在していてほしいと思う、アイテムを製作していただきました。

明日14日から展開するのは、毎年僕たちの様々な無茶なアイデアを具現化してもらっているKIDS LOVE GAITEのシューズ。

製作していただいたのは題して"Mishima"。

日本を代表する作家、三島由紀夫が着用していた革靴から着想を得てローファーともオペラシューズとも違う、いわゆるスリッポンタイプの革靴を製作していただきました。


元々、KIDS LOVE GAITEでフルハンドのシューズを作りたかったんですよね。

例えば某ロブとか、某ストンとか、某メッティとか、いわゆる最高級の革靴ってほんと最高なんですよ。ただただカッコいいし、クオリティもほんと高い。

だけれども、誤解を恐れずに言うと、その、ただただカッコいいっていうのがほんと気に食わない。
なんだよ、結局イケメンが勝ちかよ。そういうある種、僻みの感覚。
もちろんイケメンは目の保養になるし、最高なんだけど、っていうのを最大限に認めた上で、でも違う良さもあるよね?っていうことをやり続けたい。

ただ、クオリティっていうところにある一定の「美」は宿るので、フルハンドで仕立てたKIDS LOVE GAITEはどんなふうになるの?最高級に遜色ないクオリティを目指しつつ、捻りを加えたらどうなるの?
っていうのを試してみたかった。

そうすることで、新たな一面を引き出せるのではないかと思った。

エレガントでありながら、どこまでワイアードにできるか。
三島由紀夫の作品のように繊細で、不器用で、熱情に溢れていて、けれどカラッとしている。そういう靴を表現できないか。
デザイナーの山本氏と打ち合わせを重ねて、ようやく出来上がったのがこのほとんどフルハンドに近い、九分仕立てのシューズだった。
不思議な存在感があると思う。サボっぽさもあるし、ローファーっぽさもあるし、オペラシューズっぽさもある。
フルレングスで隠してしまえば、綺麗なフォルムの革靴。
けど半端丈のパンツを履いたり、ソックスインしてしまってもいい。

くるぶしを抉り取ったようなカッティング、真一文字のアッパー、異様に長い踵、少し高めのヒール。 静かに気持ち悪い。

紐靴も儀式的でかっこいいんだけれど、怠惰な僕たちにはそのままスポっと履ける方が理にかなっている。

ミニマル、現代的。
近未来ではなく、近々未来の革靴。




正直、結構安いと思う。

5/14(土) - 17(火)の4日間受注を受け付けます。

合わせて、キッズが展開している定番のウイングチップ、ストレートチップのサンプルもご用意いただきました。
あ、ちなみにインソールは黒で統一されて、今回のために特別にDave Babyデザインのロゴが入ります。
15(日)の13:00 - 17:00でデザイナーの山本氏も在店していただきます。
要アポイントメント。


ご希望の方はメールかお電話でもご説明できます。
info@mukta.jp
078-291-5045

来週は眼鏡。

イタイタイコウ 


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