Diary 087 技巧派ピッチャー
Diary 087 技巧派ピッチャー
もうすぐ6月。日中は暖かかったり、朝夜はまだまだ寒かったり、洋服を着る上での悩みが多い季節に差し掛かりましたね。ほとんどの商品が店頭に出揃う中、楽しみにしていた洋服がロンドンより届きました。遅いですね。まあ、そんなの忘れちゃうくらいカッコいんだけどね。
_J.L-A.L_の新作が遅ばせながらお店に到着しています。最近では、東京のクリエイティブ集団である、Sound Sportsとのコラボレーションが記憶に新しく、注目度が右肩上がりのブランドなのではないでしょうか。
23AWではデザイナーのジャン・リュック・アンブリッジのパーソナルな部分や、元グラフィックデザイナーであった経験を活かした、セオリーにとらわれないモノづくりが直球で伝わるよう、シェルジャケット2型のみの展開でしたが、それと同じならつまらない。だから今シーズンはそれを継続しつつ、Mukta / Salとのマッチ度を更に意識し、パワーアップした内容で展開しています。
ロンドン・ストリートウェアの王道的な部分、由緒正しき英国のトラディショナルな部分、それを彼なりのアートワーク的な解釈で崩したアバンギャルドな部分など、野球でいうと緩急の使い分けが上手い、技巧派ピッチャーみたいなコレクションです。
シワ感のある薄手ナイロンを使用したシェルジャケット。スケスケ・水色。いい色味ですね。ブランドの強みでもある複雑なパターン構成も健在で、それに対しての背面のメッシュ生地の切り替えや、ドローコードを絞った際にできるフェミニンさのあるギャザーなど、アウトドアブランドでは表現できないような、建築物的な美しさを感じ取ることができます。あともちろん撥水です。身につけているのはTORSADE BAG。螺旋状に撚られたショルダー部がシュシュみたい。
体操服みたいな、AFFXWRKS / WRKS JOGGERと合わせて、パッとコンビニでも行けるくらいラフに着たい。足元はAT. KOLLEKTIVE / SAIDA SLIP-ONでよそいき感とスタイリッシュな印象をプラス。快適さとクールさを意識した、ロンドン・ストリートウェアの文脈通りのスタイルは当たり前にカッコいい。
サラリとした表情のポリエステルの生地を採用した、変形スラックス。フロントにはアクションプリーツを配していて、走ったりしゃがんだりの動作によってプリーツが開閉。内側の縮絨加工を施しているようなシワシワの生地が見え隠れするのがカワイイ。フォーマルなスラックスを崩し、テック感を演出。コムデギャルソン的なアバンギャルドな一面も持ち合わせています。
フォーマルを崩したスラックスは、ブランドらしくテクニカルに着ることも良いけど、90's コムデギャルソン・オムのような印象を受ける、ensou / GHOST LAPEL JACKETと、アバンギャルドなムードを汲んだスタイルもおすすめ。ロンドン味の強い洋服をこのように編集できるのは、日本人ならではの楽しみ方かもしれないですね。
英国の伝統的なスクールユニフォームらしさのある、ストライプ柄のコットンシャツ。三重に重なった襟元のデザインは伝統とは真逆の革新的な印象を与えます。サイドスリットを深くすることで生じる、パンツポケットへのアクセスのしやすさや、ドライタッチな質感で清涼感のある生地使いなど、使い手の求める利便性が計算されたディテールも魅力の1つです。共生地のネクタイは、BELLOW TROUSERと同じアクションプリーツを採用。(ネクタイはブラックもあります)
ストライプシャツにDries Van Notenのスラックスで、クラシックの王道的スタイリング。タイドアップで更にクリーンな印象に。ただ、特徴的な三重襟や、ネクタイのアクションプリーツなど、テクニカルな要素が詰め込まれているので、フォーマルになりすぎないのが良いですね。ギャルソンシャツほど素っ気なくないし、ドリスのシャツほどのエレガントさはない。トラディショナルなストライプシャツを、彼の美的感覚で編集し、ユニークに仕上げています。
以上が今シーズンのラインナップ。ロンドン・ストリートウェア通りのストレートな着方はもちろん、紹介したようなアバンギャルドかつモードな着方、クラッシックなアイテムとの合わせなど、変化球的な解釈も楽しいです。
もうすぐ6月。何を着るか迷っちゃう季節。冒頭でもお伝えしましたが、_J.L-A.L_の洋服はそんなの忘れちゃうくらいカッコいい。たくさんの人に袖を通してもらえると嬉しいです。
Yuta Hirose