Diary106 -エレガントじゃない
Diary106 -エレガントじゃない

学生時代、僕が尊敬する先生がエレガントというのは貴族に使う言葉で、今の既製服にエレガントなものなんてないって言っていたのを、今でも覚えている。それから数年後、僕はドレスウェアを扱うお店で働くことになった。先輩スタッフから、フォーマルウェアは、貴族の式典用の服が起源だとか、今のスーツは兵隊や騎馬隊の制服がベースにあるとか、ジャケットやスーツ、フォーマルウェアのあれこれをたくさん教えてもらった。
そもそも貴族って、僕らみたいに電車に乗ったり、音楽ライブに行ったり、雑多な居酒屋で楽しくお酒を飲んだり、バタバタ働いたり、しないだろう。実際、当時の式典用の服にはスリットやら、ベルトループやら機能性の高いディテールは一切ない。馬車に乗るし、ご飯が出てくるし、着替えさせてくれる貴族には動きやすい服なんて必要ない。動く必要がない人のための服がエレガントな洋服であり、スーツの起源なのだ。



エレガントってのは、動きが極端に制限されるという美しさなんだと思い始めた。ウエストシェイプ、ショルダーパッド、窮屈で動きにくい。だけど、着姿がとても美しくて、所作が綺麗に見えるのがエレガントなジャケットだと思う。
大ぶりなピークドラペル、くるみボタン、ダブルの合わせ、ウエストのきついフィット。まさにエレガントな雰囲気を漂わすジャケット。体を締め付けるようなストイックなフィットは、着る人の動きを制限するが故に、人の動きを洗練された無駄のない動きに見せてくれる。DRIES VAN NOTEN / BARTON TUX 1211 M.W.JACKET - Black(251-020418-1211-900)
