"Fill in the Blank" - sulvam AW21 Collection Buying Preview -

「継続は力なり。」

人生を始めてから約25年経つのだけれども、この言葉にどうも支配されているような気がする。

何かを続ける、ということは能動的な行為ではなく、結果として続いた、という事実であることが多いように思う。
そもそも何かを続ける、ということは過剰に美徳とされていたり、大変な努力をすることであるように思われている気がしてならない。

続けるために努力するのではなく、努力するから結果として続くのではないだろうか。続けることは目的ではなく、それもまた目的に向かうための過程なのだと思う。

もしくは、力なり。なんて力んだ言い方ではなくて、もう2021年なのだから、「〇〇みがある」とか「〇〇しか勝たん」とか、もう少し肩の力を抜いてこの言葉とは付き合いたい。

「継続しか勝たん。」

ブログの更新にブランクが生じてしまった。

その言い訳がわりに屁みたいな理屈から始めたわけだが、スカンクではない。

「ブランク」というのは、スポーツ選手が前線から離れて復帰した際などに空白の期間があった、という意味でよく使われたり、さっきの「〇〇しか勝たん」の〇〇を埋めなさいという問題の時に、"Fill in the blank"なんて言い回しをする。

辞書で「Blank」を調べてみると、「空白」「余白」とか、動詞で「無くす」という意味もある。
「空白」や「余白」ということについては過去の「オンでもない、オフでもない」や「Prologue "MA"」あたりのブログで触れているように、「何もないということがある」ということを僕は大切にしている。

でもそれはどちらかというと"  "のことであり、つまり"Space"という言葉のイメージだった。

"Blank"と"Space"では微妙にニュアンスが異なっている気がする。


その答えはシステムエンジニアのプログラミングの世界にあったようで、明確に"Blank"と"Space"が使い分けられていた。

つまり、プログラミングの世界での"Blank"は""、"Space"は"  "と表される、ということらしい。

前者は「何も無いということが無い」、後者は「何も無いということがある」ということで、もっと言えば、"Blank"は存在を否定する(消す)言葉で、"Space"は存在を肯定する言葉であるだろう。

日本語に翻訳すると同じ「空白」と表されるかもしれないが、そこにはある種の攻撃性の有無の違いがある、と言えるかもしれない。

今まで、sulvamというブランドを説明するのに、解釈は自由ですよ、ということに少し腑に落ちない部分があった。
もちろん、デザイナーの藤田さんも常々そう口にしているし、着方に正解なんて無いし、sulvamの洋服には強いデザイン性に加えて「余白」が確かに存在しているので、全く分からない、ということでは無かったのだけれど。

"Fill in the space"ではなく、"Fill in the blank"というように、sulvamの洋服を着るということは、空白を彷徨いながら沁みいるように味わうというよりもむしろ、必死に自分なりの答えで空白を埋めようとする力強さ、が必要なのではないかと思わされる。
〇〇、に入る言葉は何でもいいけれども、そこには確かな意志が有って欲しい。

洋服の着方は自由だ、だけれども混沌だけでは、あまりに味がない。

毎シーズン、sulvamはシーズンコンセプトの代わりに、コレクションを発表するにあたってのステートメントを出す。

シンプルで力強い言葉が並び、そこには洋服の説明は一切ない。
服を見てもらえれば、十分だから。

感情が表出していると語る- ランダムなパターンメイキングは今シーズンもなお進化している。

確固たるクラシックな要素を土台に据えつつ、フリーハンドで引かれたパターンは洋服を常に不定形に保つ。
その不定形の洋服には数本のシルバーラインが引かれる、シルバーのパイピングが施される、ライナーが表地を突き破るように顕れる、もしくはライナーの中にむしろ表地が埋め込まれているような錯覚を起こす。

過去のモードの歴史にオマージュを捧げ、円や曲線のモチーフがこれまで以上にコレクションに登場する。

Strongというワードが浮かぶ一方で、デニムのシリーズと洗いをかけたウールギャバジンのジャンプスーツや、合理的な理由から腰布とドッキングしたレギンスは、藤田氏の極々パーソナルな部分から現れ、sulvamというブランドの多面性が現れている。

現在Salでは、デニムとウールギャバジンのアイテム、レギンスを並べています。ニット類もオンラインストアでご覧いただけます。

毎シーズンのことながら、急ぎすぎず、少し急いで秋冬コレクションに想いを馳せていただければと思います。

7月中旬には残りのアイテムがデリバリー予定です。 

SSのアイテムと一緒に、お楽しみください。

sulvam AW21 Collection

P.S.

昨日、夜20時にsulvam SS22コレクションが発表された。
今回は初めて、これまでもずっとスタイリングを担当されていた猪塚氏によるヴィジュアルディレクションによるコレクション発表だった。

sulvamという"Blank"に対して、アンビエントとミニマルテクノ、そこにエッジィな攻撃性がエッセンスとして加えられ、3DCGアニメーションを背景に単調にモデルが歩いていく様子は、人間の温かみというよりはむしろ、どこまでが現実で、どこまでがデジタルで、アンドロイドのような冷たさをもって映像が作られていた。

sulvamの大いに人間的で抽象的な洋服に対して、無機的でシュールな映像のコントラスト。

一つの"Fill in the Blank"を見せてもらったような気がする。

イタイタイコウ

 

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