DVN
Dries Van Noten氏がディレクターからの引退を表明したのち、新たなディレクターであるJulian Klausner氏が監修を務め、Dries氏のレガシーを受け継いだデザインチームによるコレクション。来季はJulian Klausner氏によるデビューコレクション(それも素晴らしかった!)になるので、今季のみ唯一デザインチームが手がけたコレクション、ということになる。ショールームに足を運ぶ前、はっきし言ってオーダーをスキップすることを考えていた。本人がいないクリエイションに意味があるのか?クリエイションのクオリティが高かったとしても、それは自分たちがやるべき仕事なのか?そういうふうに感じていた。
で、実際足を運んだ感想は、素晴らしかった。むしろ、ワクワクした。確かに元々Dries氏だけでデザインを行うわけではないし、そのデザインチームによるクリエイションには、確かにコードとしてのDries Van Notenが存在していた。そのコード、ミームを長い年月をかけて作り上げた氏の仕事に改めて尊敬の念を禁じ得なかった。長きにわたってRaf Simonsとの協業で知られ、アントワープ、ベルギーのアート、ファッションの文脈を紡いできたWilly Vanderperreがルックブックフォトを担当していることも、そのミームを受け継ぐ一助となっていた。コレクションの中には、Dries Van Notenと呼ぶべきものに加えて、"DVN"と呼ぶべきものがあった。つまり、新しいディレクターに切り替わる直前のこのチャンスを逃してはいけないと、デザインチームがコードとしてのDries Van Notenを守り、その血が活き活きと流れながらも、以前までは承認を得られなかったであろう、みずみずしいフレッシュな生地使い、シルエット使いにチャレンジしていた。そういうものを、ああこれは"DVN"と呼ぶべきだなって。それは想像の範囲を超えないが、少なくともこの数年仕入れを続けてきた僕にはそう感じられた。
どちらかというと緩やかに定番に近い新作をお店には並べていたけれど、ある程度まとまった"DVN"がお店に届いたので、今週末から並べます。僕がDries Van Notenを仕入れるときに大事にしている、「なんでもないんだけど特別なもの」や「ロマンスを感じるもの」や「古着屋さんにあったら絶対買うもの」、そういう感覚を感じられると思います。写真で全く伝わらない2タック・スラックス・ショーツ
写真でも結構伝わるツイード・ノータック・ショーツ
写真で全く伝わらないヨーロッパ企画の501みたいなジーンズ
写真でぼちぼち伝わる縦長の3Bジャケット、すっかりお馴染みのLovat Mills、すべすべのヘリンボーン
写真で全く伝わらないボンディング生地のノータック・スラックス
なんでもないんだけど、特別なもの。ロマンスを感じるもの。古着屋さんにあったら絶対買うもの。ああこういうのがDries Van Notenだし、こういうのもDries Van Notenでもいいよなって、長年Dries氏を支えてきた、コード / ミームを引き継ぐデザインチームだからこそ生み出せたコレクション。それが、僕の思う"DVN"です。お楽しみいただけると幸いです。
*Dries Van Notenのコレクションは店頭もしくは通販でのみ販売しております。遠方の方はできる限り詳細なご説明をさせていただきますので、メールにてお問合せください。
info@mukta.jp
イタイ
とんでもないものも、後から控えています。
コレクションのインスピレーションとなった"The Wild Boys"。ウィリアム・バロウズの原作を下地にしたベルトラン・マンディコ監督の長編デビュー作、とのこと。今シーズンのコレクションは、Dries Van Notenというブランドを下地にした、デザインチームなりにリスペクトを込めたトリビュートアルバム、のような感覚がする。