Diary 018 センスの良い着崩し
どうも僕はユニフォームが好きなようだ。
元より、僕はワークウェアやミリタリーをベースにした服を好んで着ている。それらも元を辿れば何らかの組織のユニフォームだ。
本来、ユニフォームとは、組織で同じ服を着用することで、連帯感を強めるためのもので、自分の好きな服を着て個性を表現するファッションとは、一見すると相反する性質を持っている。
しかし、各々の"着崩し"のセンスによって、個性を際立たせることが出来る。そうやってファッションと同じく各々のセンスが発揮できるのが、ユニフォームの面白いところだ。
デザイナーが、機能性や利便性を第一に考えられた、画一的なユニフォームをベースにデザインを行い、ファッションとして新しい服を作り替える事はその"着崩し"のようなものだと思う。
そういう服に惹かれる。
秋冬の街並みに映える、赤いスコティッシュタータンチェックの3ピース。どれも数シーズンに渡ってリリースされている定番の形、Nicholas Daleyのユニフォームだ。
今回のツイードは19世紀後半から続くイギリスの老舗生地屋「ロキャロン」にビスポークで製作を依頼したもの。つまりこのコレクションの為だけに作られた贅沢なファブリックだ。
クラシックなイギリスの洋服をベースに、老舗ファブリックメーカーのビスポークの生地を。
この本物思考の感覚は、彼のサヴィル・ロウでの経験と、クラフトマンシップを大切にする家族のバックボーンが活きている。
大ぶりの襟、大振りなフラップが付いたフロントポケット。ビスポークのツイード生地をたっぷりと使用したオーバーコート。男なら誰しもが惹かれる要素が詰まっている。
この生地量で、切り替えなしのオールロキャロンの使い方は圧倒的。しかもこのサイジングなら色々なレイヤードを楽しめる。
ヴィンテージのトラウザーズを元に、彼のサイジングと形に。このバランス感で一目でNicholas Daleyの服だと分かるはず。僕はストリートウェアとして着崩したいので腰を落として履く。
ちなみに僕の被っているベレー帽はハンドクロシェットで作られたもの。彼の母方の家族はジュート系編み物の職人の家系、つまりハンドクロシェットは彼のルーツだ。
一見難しそうな帽子だが、被ってみるとワークやミリタリーみたいな男臭い服に上手くハマる。ドレッドヘアーじゃなくたって格好良く被れる。
彼の服はどことなくヨウジヤマモトの様な、男臭い格好良さがある。服の仕立てからか、サイジングからだろうか。
以前インタビューで彼は山本耀司を尊敬していると話していたが、そのリスペクトを着て感じとれる。ヨウジヤマモトの洋服もエレガントな服を不良流に着崩して纏う、男の為のユニフォームだと思う。
彼の作る服は海外のデザイナーズの中でも、僕たち日本人になぜだか自然と馴染む。それは、ヨウジヤマモトの影響なのかもしれない。今の時期にはベストなんて丁度いい。少し肌寒くなってきたらダウンのインナー、もしくはアウターに重ねてみたり。
サイドレースでサイズ調節が効くのも嬉しいところ。 ナイロンのパリッとした質感にロキャロンツイードのコントラストを付けるのが今の気分。こちらはサフォークでビスポークの生地で製作された色気のあるセットアップ。
ジャガードで織られた艶のある大ぶりのストライプ生地は、ウールポリの混紡素材。彼のバックボーンのブラックカルチャーを感じる情熱的なカラーパレット。
襟元のコットン生地の切り替えが、ユニフォームらしさをより強調する。イメージはリゾート地の高級ホテルのフロントマンのような品のある制服。
機能性のあるワークベストに、昔の作業員が履いていたようなパンツ。馴染みのあるワークウェアが彼の手にかかれば、高級テーラーが作ったかのようなユニフォームへと生まれ変わる。彼の服は無骨なクラフトマンシップと色気が両立している。
ニコラスの服は日常のユニフォーム。
ニコラスの仲の良いブラックミュージックのアーティストのように、もしくはサヴィルロウの文脈でパリッとテーラードに合わせる。
どう着崩すかはあなた次第。
田中
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