2022.08.14
夢オチ
かねてより虫の中でもゴキブリが大の苦手で(多くの人がそうだと思うが)、いまだに見かけると声が出る。2メートル圏内に入っただけでも鳥肌が立つ。
今朝、そのゴキブリが物凄いスピードで自分に向かって飛んできて、逃げる間も無く、肩に止まった。
もし飛んできたらどうしよう、なんて想像を普段からすることはあっても、まさか現実に起こるとは思っていなかった。想像の段階で発狂ものだった。
しかしいざ自分の肩に止まると諦めるより他なく、悲しみとやるせなさに包まれながら、力無くそっと払いのけた。いや、払いのけたというよりは、手で優しく包んで、その虫をまた別の場所へと運んだ。
自分でもそれは意外だった。思いもしないことが起こった瞬間、存外人間は冷静になるもので、まず思い上がった自分への諦念混じりの自己嫌悪感が湧き、自己嫌悪感はやがて、ゴキブリに対する親愛の情にすら昇華された。
そう、このゴキブリは自らの臆病な自尊心を破壊しにやってきた使者だった。
僕は彼をもう一度捕まえ、手のひらにそっと仰向けで載せてみた。
仰向けになった彼は、細かい足をバタつかせながら、必死に元の態勢に戻ろうと懸命に努力する。その様子を見守っているうちに、彼の視点と自分の視点が入れ替わった。
彼は僕だった。彼の視点で自分を眺めている。
そのまま自分の腕を駆け上がり、肩、首、そしてついに驚きとともに大きく開いた口の中に飛び込んだ。
そうして、彼と僕は一つになった。
臆病な自尊心を持つ自分と、それを破壊する彼も同一の自己だった。
という夢を見たんだ。
イタイタイコウ